遠藤周作 男の一生
主人公の前野将右衛門の、前野家の蔵に所蔵され、昭和34年の、伊勢湾台風の被害で世に出た、新歴史資料「武功夜話」の内容に基づいた小説。 主人公である前野将右衛門は、無名だった豊臣秀吉の初期の頃から家来として仕え、立身して但馬十一万石の大名となるが、秀吉の世継ぎ候補「秀次」の伏見事件に連座して、自害を決意した人物で、彼の生き様を描くと同時に、信長の、秀吉の、今まで語られていなかった姿を浮き彫りにしている作品。 それまで伝えられた信長、秀吉のイメージに比べ、かなり人間味のある面が、生き生きと描写されている。 天才的なヒラメキを持つ信長、今までの残酷、冷酷、癇癪持ち、というイメージよりも、一人の男として苦悩し、愛する女性を失い慟哭する姿・・・
歴史小説専門店のおすすめ
司馬遼太郎 国盗り物語
この歴史小説の影響は、計り知れない、そう思っている。 歴史好き、もしくは、信長を中心とした戦国史に興味を持つ人の、道三、信長、秀吉、光秀のイメージは、かなり、この作品の影響を受けていると感じる。 個人的には、とてもでは無いが好きになれない、NHK「大河ドラマ」で、この時代を扱うトレンディー作品も、殆どが、この「国盗り物語」の、歴史を「史実」としてベースに据えている。 過言すれば、そのライターは、自己で独自に「歴史」を調べず、この作品を読んで、歴史を学んだ事としている、そんな感じがする。 良くも悪くも、現代の戦国史に、多大な影響を及ぼした作品である。 お奨めは、道三、信長、光秀、秀吉の、一連の「流れ」が、そして、人間関係が把握出来る面である。 それぞれの傑出した人物、その考えの違い、言動の違い、そして、その結果の違いが、明確に理解出来る。
津本 陽 下天は夢か
うつけ者と呼ばれた幼年期の信長から、本能寺の変までを描いた作品。 家督を継いだ信長は、骨肉争う内戦を勝ち、宿敵今川義元を桶狭間に討ち取る。 鉄砲と集団戦法によって近代化された織田軍は、尾張を平定し、積年の難敵美濃の斎藤を討滅する。 楽市楽座の経済策を成功させ、上洛を果たした信長は、越後の上杉、甲斐の武田、中国の毛利等の戦国大名群から抜き出て、天下統一の野望を持つ。 一向一揆掃討、更に味方内の陰謀家義昭の画策する危険が絶えない中、敵対する比叡山延暦寺を焼き打ち、浅井・朝倉勢を攻め落し、伊勢長島の一向宗徒を殲滅させるという、死闘の連続。 天下政権を打ち立てた、比類ない明晰な男は、新しい世を開いた生ける神、独裁者としての一面をも現わす。 最強の敵石山本願寺を征服し、日本全土支配の「夢」の実現を目前に、奇襲を受けて、本能寺に自刃し生涯を終える。
永井路子 王者の妻
女性である著者の、一種独特な歴史観、これは毎回新鮮な感銘を受ける。 本書は、やはり女性の目から見た、秀吉、そしてその妻、「おねね」を描いた作品。 一介の草履とりから、ついには天下人と成った秀吉、しかし、女性、権力欲で、以前とは別人のような夫の姿に、妻「おねね」は深い孤独を感じる。 戦乱の世は、徳川の天下へと移り、豊臣と徳川の対立に心痛め、奔走する「ねね」。 栄華を誇った豊臣家も最後の日を迎える。 日本一の出世男を夫に持ちながら、最後まで庶民的な性格を失わなかったおねねの姿を通し、戦国の女性たちが抱えた問題を取り上げた小説。 秀吉こと籐吉郎が、おねねに求婚するところから、豊臣家が滅ぶまでを描いている。 著者は、秀吉ほど残虐な人間は居ないと酷評する、が、反対に、その妻おねねは、日本史上、最高の「おかみさん」と評する。
渡辺淳一 静寂の声
「乃木大将」、この名前を知らない日本人が、近年は随分と多くなったと思う。 日露戦争203高地の激戦でも有名な、日本の将軍で、明治天皇崩御の時に夫妻共々、殉死した事で有名である。 子供の頃、この「乃木将軍」の事を、教えて貰い、その生き様が、どうしても子供心には、理解、納得が出来なかった。 何故、この人物を、子供の頃に理解出来なかったのか・・・ それは、自分の息子2人を、203高地で殉職させているからである。 「大将」とは、「軍隊」とは、「戦争」とは、それが理解出来なかった。 何故、親が子供を見殺しにするのか・・・? 後年、「大将」という立場から、泣く泣く我子を戦地に、死地に向かわせた、その状況だけは、理解は出来た。
阿川弘之 山本五十六
司馬遼太郎に依れば、織田信長にしても、坂本竜馬にしても、歴史は、その時代が必要とした人物を輩出する、となるが、では、山本五十六は、激動の時代の中、どういう使命を帯びて、この世に出たのか・・・? そして、何を残して去って行ったのか・・・? 歴史に、「もし」は禁物ではあるが、信長、竜馬とならんで、「もし」五十六が戦死していなければ、そう考えさせられる歴史的な人物の1人であると、私は思っている。日本海海戦から真珠湾攻撃を経て太平洋戦争に突入した日本帝国、アメリカ留学経験があり、先見性を備え、しかし、ギャンブル好きで、涙もろくて、練習中の航空訓練生の死に、身悶えるほどの悲しみを表す、愛すべき、人間味のある、五十六。











