史疑 徳川家康事蹟
村岡 素一郎
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発売日: 2000-04
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信じ難いが興味深い。
日本の歴史における約300年の太平の世の基礎を築き上げた徳川家康の出自に目を向けた作品です。様々な根拠から徳川家康は本当は三河松平家出身の大名ではなく元々は素性の知れない坊主であり、後に顔付きがよく似ていた本物の徳川家康と成り代わりその後の歴史を作ったという内容の作品です。彼の日本史における功績は変わらないとしても読み終わった後今まで日本史において習ってきた内容が根本から引っくり返された気分になりました。歴史というものはやはりいつの時代も事実とはかなり曲げられて後世に伝えられている部分も相当あるのではないかと教えてくれた作品です。
多くの学者、作家を魅了した明治の奇書
歴史を語るものに奇書は多い。それは要するに「真実」を巡るものだからだろう。
この本は、時の内閣修史局編修官兼東京帝国大学教授にして抹殺博士の異名もあった重野安繹(やすつぐ)、「国民新聞」を主宰し当時の言論界に多大な影響力があった徳富蘇峰、ずっと後代に入って南条範夫ら作家たちまでを魅了した明治の奇書である。
『史疑徳川家康事蹟』の主張は、簡単に述べれば次のようになる。つまり、のちに江戸幕府を開いた徳川家康は、今川家に人質にとられた松平竹千代とも、今川義元の元で働いた青年武将松平元康とも別人であり、願人坊主とささら者の娘との間にできた私生児がその人である。この私生児は成り上がり、やがて松平元康を暗殺し、これに代わって岡崎城主となって歴史に登場し、織田信長と清洲同盟をとりむすび、「徳川家康」となっていく。
どこかで一度は聞いたことのある(カムイ伝のバックストーリーにもなってる)、「おだやかならぬ」家康の「出生譚」。熱狂的に迎えられた『史疑徳川家康事蹟』は、しかし長らく再販されることはなかった。時の権力中枢にも多く人を配していた旧幕出身者からの圧力であると人々は噂した。しかし、その主張は幾たびも作家たちに取り上げられ編曲されて、繰り返し語られていく。「勝った者が書いた歴史」の下にはいつも、その権力を覆せるような「真実」が埋まっている、と信じられつつ。