二人の天魔王―「信長」の真実
明石 散人

定価: ¥ 620
販売価格: ¥ 620
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発売日: 1995-09
発売元: 講談社
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信長よりも
この本、信長の事を書いている用でいて、明石散人が本当に書きたかったのは足利義教のこと。では、その義教とは何者かというと、いままではほとんど知られていなかった人物で、くじで選ばれた将軍、部下に暗殺された将軍といったイメージしか、いや、それすらもなかったといってもいいとおもう。ところが、この義教は、総てにおいて、あの信長を遥かに凌駕した人物だったというのだ。「最高の武家は頼朝、最強は秀吉、最大は、家康。義教は『無類の上』ともいうべき武将」と明石散人が評価する足利義教とは・・・。
この本に低い評価をしている人は、きっと信長のことが大好きで仕方のない人なのでしょう。なぜなら、今までのあなたの信長観が、音を立てて崩れ去るから。それが許せないのでしょう。
写楽論は評価したが…
明石散人なる人については「東洲斎写楽はもういない」を読んでいる。これはかなりの出来と思われた(今思うと博識の極みのはずの散人さんが高校数学の内容も知らないなど胡散臭さが印象的だが)。で、私にとって日本史上最も興味深い人物である織田信長について書いているというので読んだ。
結果は惨憺たるもの、無残である。写楽本で「史料は実物を見ないといけない。刊行本は校訂者の主観が入るから!」と言っていたのは明石さんですよね。でも、ここでは「信長公記」の数ある写本を1つでも見た気配はないし、「現代語訳」しか公表されず偽書説もある「武功夜話」を平気で引用している。
書かれている内容も私には論外としか言いようがない。1例だけ。美濃平定に多年を費やしたことで武将としての信長の「凡庸」をいうけど、戦国時代の「戦争」の実態をまるで理解していない。近代の国家を挙げての総力戦とはまったく違うのである。戦争で失った兵力は容易には回復できない。だから、大きな被害の予想される全面戦争は基本的にできないのである。それは戦国の雄とされる上杉謙信と武田信玄をみれば明白。川中島合戦といっても、わずかな領土を巡る争いに過ぎないし、そもそも「合戦」と呼ぶに足る衝突は1回のみである。
書物としての形式も頂けない。「対話」形式をとっている。確かにプラトンやガリレイなど優れた「対話篇」は多いが、仮想の対話者がしっかりとした思考をして初めて成り立つ。が、ここでの対話者は「そうかなぁ」「確かにそういわれると…」「そんな気がしてきました」の連発。「よいしょ」の連続には読んでいて腹がたってくる。これは「対話」の悪用の典型例といえよう。
これを「筆力」と認められる方は認めればいい。実際にファンは少なからずいらっしゃるようである。だが、私はもう十分。本代も時間も限りがある。明石散人さん、さようなら!
著者の筆力に、引きずり込まれた方がお得です。
あの桶狭間の戦いが、信長による奇襲ではなくて、今川義元公に対する降伏の口上に伺うところだった…、すなわち“信長の騙し討ち”であった。
だからあれ程までに、今川軍も用心していなかった…と、「信長公記」を解読させてみるあたりは、さすが博覧強記のお方と感服。
これまで信長の戦い方は、桶狭間の一戦以外は、勝てる保証のない戦いはしていないと思わされてきたが、あれは騙し討ちと信ずれば、あとは納得、納得。
そう思うか思わないかは読者諸兄次第だが、そう思ってしまう楽しさが随所に出てくる本だ。気軽にそう思って引きずり込まれた方が、絶対お得です。