信長軍の司令官―部将たちの出世競争 (中公新書)
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発売日: 2005-01
発売元: 中央公論新社
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史料から浮かび上がる信長軍の事実
どうも戦国時代の武将を扱う本は人物本位の記述に傾きがちである。
戦国乱世で頭角を現す人物であればこそ、波瀾万丈、魅力溢れる人物像を描き出せるので読み物としても面白い。
だが、軍隊として考えたらどうか、組織として考えたらどうか。
確かに魅力溢れる人物達であるが、エピソードばかりに焦点を当てていては実像は見えてこない。
この本では織田信長麾下の部将達を信長軍という組織から捉え直している。
だからこそ組織論に関係しないようなエピソードは一切省かれている。徹頭徹尾、信長軍という組織からの視点で捉えられている。
最終的に方面軍を担うこととなった柴田勝家、羽柴秀吉、明智光秀、滝川一益あたりが当初から大きな活躍をしていたと思われがちであるか、史料に丹念にあたってみるとまた違った像が見えてくる。
柴田勝家も不遇の時代はあったし、羽柴秀吉は成り上がる過程は信頼すべき史料では今ひとつよくわからない。滝川一益などは北伊勢の鎮圧と言った地味な活動での実績を認められたと言える。佐久間信盛のように宿老であっても地位と能力がふさわしくないと見られれば放逐される。丹羽長秀も方面軍を任すに足る人材ではないと見切られたという指摘は面白い。荒木村重も一事は重用されていたが、一国を任す以上の人材ではないという評価に我慢できずに反乱を起こしたあたりも面白い。あまり知られていない塙直政という人物も興味深い。大坂攻めで戦死していなければ今後も信長軍の中核を担う人材の一人として活躍を続けたのか、もうしそうであれば本能寺の変やその後の羽柴秀吉の政権獲得もなかったかも知れない。
不完全ながらも史料を丹念に読み込み、考察と実証に努めた成果である。
信長の部下を見る目の確かさ、場面場面の応じた人材登用の妙、要するに人材活用の手腕が信長が天下の覇権を手中に収めた最大の要因であったのだろう。単なる奇人には人がついてくることはない。力だけに人は従うわけでもない。
単なる人物論を越えた、時代としての戦国を捉えようとする視点にこの時代のダイナミクスを感じた。
信長配下の厳しい出世レースを描く
京都での行政能力を評価され一気にのし上がった塙直政、浅井家の降将でありながらいきなり宿将なみに扱われた磯野員昌、上洛当時の出世頭・中川重政などなど、あまり知られていない武将の浮沈までを時期によって説明。
柴田、明智、羽柴など、最後に方面軍司令官になった者たちは、厳しい出世レースを勝ち抜いたことがよくわかる。荒木村重は、一時は信長配下で最大の所領を与えられながら、その後は頭打ちだった。謀反に至った理由も納得だ。
著者が学恩を受けた高柳博士による「光秀より塙直政のほうが上だったわけですね」という言葉が、そう語ったときの表情とともに忘れられないと後書きに書かれている。このテーマに関して著者が歩んできた道のりを感じさせるようではないか。
ただし厳しくいうなら、全般に地道な説明であり、読み物として盛り上げる技術や、シンプルで大胆な仮説を提唱してみせるサービス精神はない。だから、やや甘めにつけても★4つ。
厳しくドラスチックな信長の下での出世競争
塙直政、梁田広正、中川重政、磯野員昌…。皆さんの中で、これらの名前にピンと来る方がいらっしゃったら、よほどの戦国武将通でしょう。
彼らはいずれも信長の家臣で、一時は柴田勝家などの重臣と肩を並べるまで出世しましたが、戦死や失策また追放等により競争から脱落していった武将達です。羽柴秀吉や明智光秀等も最初から一頭抜けていたわけではなく、先に示した武将達と激しい競争を繰り広げた結果、数カ国の軍勢を動かす地位(方面軍司令官)にのぼりつめたということを本書は教えてくれます。また改めて感じたのは、競争がごく短期間に行われたこと。諸武将に関する記述と巻末年表を突き合わせて見るだけで、わずかの間に彼等が浮上しまた沈んでいったことがよくわかります。
何となく思い込んでいたイメージを事実で正してくれる綿密な文献調査に脱帽です。
